ならしのしぎかい たかはしまさあき

町会活動の問題点

地域の活動の中心である町会・自治会等活動ですが、参加率の低下、人手不足、負担感の増加、コミュニケーションの難しさなど、いくつかの課題があります。また、活動内容の偏りや若者の参加意識の低さ、情報共有の不足、組織運営の固定化といった問題も見受けられます。

令和5年10月

BBS山陰放送、10/1(日)6:13配信

「自治会入ってないとゴミ出し禁止…脅しをかけられています」自治会トラブル複雑化 未加入者「メリットない」、自治会員「不公平だ」、市「助け合って…」

かつては入るのが当たり前という暗黙の風潮があった「自治会」。加入者はいま減少傾向ですが、自治会と未加入者のトラブルが全国で多く確認されています。すんなり入るのが正解なのか、それとも入らない選択肢もあるのか。自治会と未加入者のトラブルの実態を取材しました。
先日、BSS山陰放送に、あるお便りが届きました。「ごみ収集について、自治会入っていない人は出してはいけないという、理不尽な事を言い出して、数人で家まで押しかけ、今後市役所の担当者も引き連れて家に来ると、ある意味脅しをかけられています」送ってくれたのは鳥取県米子市に住む女性です。女性によると、1997年ごろに市内に家を建て、およそ10年間自治会に所属。子ども会の班長なども務めましたが、子どもが成人したのを機に退会しました。自治会退会後も、これまで通りゴミを捨てるなど変わりない生活を送ってきましたが、去年10月と今年6月、女性の元に封書が届き、7月には自治会長らが女性宅を訪問してきたといいます。自治会を退会した女性は、「夕方家に来られて、これからはゴミステーションもできたので、自治会の管理下のもとなので、入ってない方は捨てないようにと言われました」。実際に送られてきたという文書を見せてもらうと、新設されたゴミステーションは自治会が設置し管理するもので、会員以外は使用できないとの記載があります。合わせて、自治会加入の可否について問う文章も記載されていました。自治会を退会した女性は、「自治会加入は本来は任意のものだから、理由を言う必要はないと思います。私は以前自治会を経験していますが、色々なことでちょっと納得いかないので、自治会は辞めることにしましたと言いました」。そもそも自治会の入退会自体は、法律上の義務はありません。ただ、自治会内のルールは自治会ごとで決められるため、対象の地区で暮らす住民は、そのルールに従うのが習いと言えます。
今回、どのような経緯で封書の配布や女性宅訪問をしたのでしょうか。自治会長にも話を聞きました。自治会長は、「あまりにもゴミが散らばるということがありました。前日に出したりとかね。そういうことで、ネコ・イヌ・カラスが、以前のネットをかけただけの集積所をつついてしまったんです」。以前、この地区の収集所は県道沿いにあり、自治会員で管理をしてきました。しかし、分別や指定日などルールが守られていない状況が続いたほか、鳥獣の食べ荒らし被害も散発したため、米子市が管理する近くの緑地に、ネット式ではないゴミステーションを自治会費から捻出して新設することになりました。自治会員の男性は、「自治会に入っているときは(女性も)当番していたと思いますが、抜けられたあとは当番をしていません。『自治会に入ってない人が捨てることをこれまでは黙認していましたが、これまでのゴミ置き場はなくなって捨てれなくなるので、もう1度自治会に入り直しませんか?』とさせてもらって。でも『入りたくない』って。まあ、そこを強制するつもりはないので、その代わりに我々が設置して管理しているゴミステーションには捨てられないよと。他の自治会の皆さんからも、その特例の了承は得られないという話を差し上げた次第です」。これまで「自治会に入っていないとゴミを捨てられない」という明確なルールはありませんでしたが、今回は経費も発生したため、利用法を見直すことになったというわけです。
では、自治会未加入者は、どのようにゴミを捨てれば良いのでしょうか。実際こうしたトラブルは、頻繁に市に相談があるそうです。米子市クリーン推進課の担当者は、「まずは自治会内でお話をいただき、場合によっては、市の担当者が両者の間に入ってトラブルの解消に努めています。仮にステーションの横などにゴミを出されても回収業者は回収はしないので、最終的にはクリーンセンターへの直接搬入か、市の許可業者に有料でゴミ収集に来てもらうなどの方法を未加入者には案内しています」。

自治会加入率は以前と比べ、減少の一途をたどっています。例えば米子市では自治会加入率が2013年には64.6%でしたが、年を経るごとに低下し、5年後の2018年には61.8%に。さらに5年後の2023年(4月30日現在)は58.1%と、6割を割り込みました。米子市地域振興課の担当者は、「自治会に入っておられない方というのはごくごく少数で、どちらかというと若い世代が多いと感じています。自治会に入らない理由は、よく口にされるのが、『だってメリットがないでしょ』って。自治会費を払って、役まで受けて。地域の活動に興味がない方が多いんじゃないかなという印象です」。自治会に入ると、役員や班長業務が定期的に回ってくるほか、一般の会員も市の一斉清掃や出水期前の用水路清掃などに参加することになります。そして、地域に設置している防犯灯の電気代なども自治会費で負担している部分があると言います。また、地域のゴミ収集所の中には、自治会メンバーが私有地を無償で提供している場所も少なくありません。そのほか、半行政的な仕事を自治会が担っていることも多いと言います。加入率の低下が著しい今、会員の負担は大きくなっているのでしょうか。自治会員の男性は、「(自治会業務は)増えていません。そもそも前から多いです。大半の人が役員を兼務しています。うちはなり手がないので、総務と防災が兼務していたり、会計と交通が兼務していたりします。ゴミの当番でも役があって必ず班長をしないといけません。そうなると、自治会費を使って作ったステーションに未加入者でもゴミが捨てられる、そういうサービスを認めるってわけにはいかないんです。それは他の自治会のメンバーさんからしたら納得がいかないと思います」。
こうした実態を行政も把握していますが、抜本的な改善策がないのが実情です。仮にゴミの収集所の維持管理、地域の清掃活動などの自治会が担っている仕事を行政に任せたとして、結局は外部の業者に委託することになります。そうすると税金の使い道を再考する必要も出てきます。米子市自治連合会事務局の担当者は、「自分の住んでいる地域も、何もしなくても安全に暮らせているかっていうとそうじゃなくて、何か道路に支障があったら地域の誰かが言って直したりとか。そうやって今の私たちは安全な暮らしをしていると思うのですが、皆が助け合って暮らしていること、そこを分かっていただけると良いのかなと思います」。お便りを送ってくれた女性は、現時点では自治会への加入の意思はないということですが、女性が願うこととは・・・、自治会未加入の女性は、「多分、自治会さんも上から色んな指示とかされて大変な仕事が多いと思います。その中で自治会と未加入者のトラブルが起きているという可能性もないとは言い切れないと思うので、本当に市自体が、自治会連合から何から全てをちょっと変える方向性で考えていただきたいと思います」。
そこに住む以上、地域に無関心というわけにはいきません。住民も自治会も行政も、それぞれが街づくりの仕組みについて改めて考えてみても良いかもしれません。

令和4年11月

産経ニュース、4年11月19日配信

自治会非加入でゴミ捨て場「出禁」は違法か 最高裁に舞台が移った住民トラブル

自治会への非加入を理由に、地域のごみ捨て場の利用を禁じられたのは違法だ。神戸市の住宅街に住む夫妻がこう主張し、地元自治会に慰謝料とごみ捨て場を利用する権利の確認を求める訴訟を起こした。行き過ぎた「制裁」か、それとも掃除当番の負担を免れた「ただ乗り」を防ぐ正当な判断か。最高裁にまで舞台が移った訴訟が浮き彫りにしたのは、地域の共助を前提とする行政サービスの制度疲労だった。
◎出禁で「ごみ屋敷」に
閑静な住宅街で、この問題の端緒となったのは平成31年2月。それまで都市再生機構(UR)がごみ捨て場を所有し誰でも利用可能としていたが、所有権を自治会に譲渡した。これを受け、自治会は総会を開いてごみ捨て場に関するルールを決めた。自治会の役員や掃除当番を負担する住民の年会費は3600円▽掃除当番などを担わない住民は「準自治会員」として年会費1万円▽会費を払わない非自治会員は利用禁止-との内容だ。原告の夫妻は約20年前からこの住宅街に住んでいるが、数年前に自治会から離脱していた。役員がルールを伝えて入会を求めたが拒否。ごみ捨て場を使えないため、ごみ収集車が到着したタイミングで直接作業員に手渡すか、親族に廃棄を頼むしかなくなった。その結果、夫妻宅は「ごみ屋敷」と化した。神戸市によると、集まったごみを回収する作業は行政が担っているが、「ごみ捨て場の管理は基本的に地元住民に委ねている」(担当者)。戸別回収することもあるが、主な対象は歩行が困難な高齢者や障害者に限られるという。夫妻は令和2年、自治会の対応は「所有権の乱用」として、損害賠償やごみ捨て場を利用する権利の確認を求める訴訟を神戸地裁に起こした。
◎「自治会の対応は違法」
自治会側は「会費を払っていないのに利用を認めれば、自治会員との間で著しい不平等が生じる」と反論。しかし、神戸地裁は翌年9月、夫妻にはごみ捨て場を利用する権利があると認めるとともに自治会の対応は違法として、計20万円の損害賠償を命じた。同地裁は、神戸市の制度を踏まえると「地域のごみ捨て場の利用を禁じられると、家庭ごみを排出する手段を失う」と指摘。「ごみ捨て場の管理は(誰もが利用できる)行政サービスの一環といえる。一部の住民を排除するのは相当ではない」とした。判決を不服とした自治会側は控訴したが、大阪高裁は今年10月、1審に続き自治会側の違法性を認めた。たとえ自治会に入っていなくても維持管理費などの負担を求めればよく、「非自治会員の利用を一切認めないのは正当化できない」と判断。そうした金銭負担の提案を夫妻にすることなく〝出禁〟(出入り禁止)としたのは、入会の強制に等しいとして計30万円の支払いを命じた。ただ、1審が認定していた夫妻がごみ捨て場を利用する権利自体は認めなかった。双方は控訴審判決を不服として上告した。
◎岐路に立つ自治会制度
ごみ捨て場をめぐるトラブルは各地で起きており、この訴訟は氷山の一角にすぎない。国立環境研究所(茨城県)が2年前に全国調査した結果、7割もの自治体で、自治会への非加入者が地域のごみ捨て場を利用できない問題を抱えていた。鈴木薫特別研究員は「自治会加入者が減少傾向にある中、住民間の摩擦が生じるケースは増えている」と分析する。ただ、行政はこうした問題への関与に及び腰で、大半が住民同士で話し合って解決するよう求める対応にとどまっているという。自治会への加入を敬遠する風潮が強まる半面、自治会の存在を前提とした行政サービスは多岐にわたるため、運営する側の苦悩は増している。訴訟の被告となった自治会のある役員は、住民トラブルの仲介や行政との折衝など労力がかかる任務が多いとして、「『入会しなくても自治会のものを使える』がまかり通れば、会員の減少に拍車がかかり、自治会の存続は難しくなる」と漏らす。地方自治問題に詳しい東京都立大の玉野和志教授(地域社会学)は「ごみ収集は本来行政が担うべき仕事で、自治会は好意で協力しているにすぎない」とした上で「自治会ありきの仕組みは限界にきている。行政は根本的にごみ収集のあり方を見直す必要がある」と話している。(地主明世)

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